神戸市北区北鈴蘭台駅前の内科・小児科・外科 こさか家庭医療クリニックです。

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若手医師冬期セミナーにて講師してきました

2015/02/22

2月21日、東京大学におきまして、日本プライマリ・ケア連合学会 若手医師冬期セミナーにワークショップ(以下、WS)(ワークショップとは http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%97 )講師として参加してきました。

私たちのWSのテーマは「Beyond the Guidelines」。我々、プライマリ・ケア医がよく出会う病気のガイドラインをしっかり踏まえ、ガイドラインを越えていけるようになりましょうという目的で行われました。

今回、ワークショップという名ではありますが、内容と時間の都合上、ワークはなく、レクチャーという形式になりました。総勢80名の学生、初期研修医、後期研修医の参加をいただきました。
お話したガイドラインは1.高血圧 2.脂質異常症(高脂血症) 3.2型糖尿病 4.骨粗しょう症 5.前立腺肥大症でした。私の担当は2の脂質異常症について15分ほど話しました。

皆さんよく勉強していらっしゃったようで、ガイドラインの内容を日本、ヨーロッパ、アメリカの3国比較で話しましたが、事後アンケートを見るともの足りなかったようです。
確かに、私もひさしぶりのレクチャーで要領を忘れていて、聞き入らせるテクニックをいくつも忘れていましたし、受講者のニーズを想像することにかけていたかもしれません。反省です。

しかし、今回、講師をさせていただいたことで、自分自身もよく学びになりましたし、他の先生方の話を聴いて、さらに勉強になり、とてもよかったです。
今回、このWSのお誘いくださった福島大学の菅家先生始め、そのほか一緒に講師をした大浦先生、瀬野尾先生、土田先生、山入端先生、そして冬期セミナースタッフの皆様に感謝申し上げたいと思います。
次の機会があればまた、誘っていただきたいです。そして、次は改善され、もっと熱くて学びになるものを提供できると思います。

西加奈子「サラバ!」読みました

2015/02/11

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今年の直木賞受賞作品ということで、早速、読んでみました。

一言でいうと「すごい」です。何がどうすごいかを伝えるのはできないのですが、なんというか、最初はさざ波のようで、だんだん大きくなり、最後にはすごい波になる感じでした。

お話の内容は作者の自伝的内容となっているようです。
主人公は歩(あゆむ)。1977年、父の転勤先のイランで生まれるところから話が始まります。問題行動を繰り返す姉、静かですごく優しい父、美しい母との家族関係。母と姉の関係。母の愛情を得るために受け身と諦めの姿勢を取り続けるようになる主人公。特に、カイロに住んでいたときに親友ヤコブとのエピソードが後々にも影響を及ぼし、このときはじめて「サラバ!」がでてくる。しかし、両親の離婚により、帰国し、ヤコブと別れ、いつの間にかその言葉も忘れてしまう。そして、成長していく過程で出会い、別れを繰り返し、揺り動き、37歳の今までを振り返る。

さまざまな出会いの中でキーマンとなってくるのが、両親と姉、夏枝おばさん、矢田のおばちゃん、須玖、鴻上、ヤコブである。

特に私が気に入ったのは「矢田のおばちゃん」で、背中に弁天の入れ墨があり、矢田アパートの大家でありながら、地域のゴッドファーザー的な役割を担っている。多くの人が、おばちゃんの家を訪れ、悩み事を話、おばちゃんはうんうんと聴いて、人々は帰っていく。そんなおばちゃんは物語の最後までいい影響を及ぼし続ける。

そして、作者が最も言いたいのはずばり「自分が信じるものを誰かに決めさせてはいけない」だろう。最終的には自己啓発的な感じになるが、主人公の周りにも、時々、自分の信じることを貫く人たちが現れるようになっていた。そのへんもうまく効いていると思える。

西加奈子作品は「円卓」しか読んだことがなかったが、円卓同様、最後はさわやかに読み終えることができました。円卓はつぼみから花がぽっと咲くような感じでしたが、こちらは大波がざざーっと来たような印象をうけました。

上下2巻ですが、どんな人でも読んでみる価値はありです。

 

地域志向ケア

2015/02/01

家庭医療の必須項目として地域志向ケアがあります。
その医師の働く地域に対して介入し、地域全体をケアするといった概念といえるでしょうか。その地域の抱えている健康問題を調査し、その原因と解決法を探り、問題を解決することでもあります。
もっとも簡単な具体例としたら、側溝の蓋がないから危ないので、役所に申し入れて蓋をつけてもらうとかですね。
もっと高度な実話をもとにした例を挙げますと、粟国島の長嶺先生が行った例をあげようと思います。

沖縄県の離島、粟国島は人口800人程度の島ですが、年間の本島への緊急ヘリ搬送がかなり多い離島として、沖縄の離島医療を知る者の中では有名な島でした。私のいた西表島西部(人口1400名程度)で年間12件前後でしたが、粟国島はその倍以上、年間50件はあったのではないでしょうか。もともと、粟国島は本島から飛行機で行くような場所で船で移動したらかなり時間がかかる場所だったので、ヘリ搬送数は高速船で1時間以内で石垣島につく八重山諸島(与那国を除く)よりも必然的に多くはなります。そこに長嶺先生という若く、体は小さいが、やる気に満ちた優秀な女性医師が赴任することになりました。その島は女医には難しいだろうといわれていたのですが、配属を決める人たちは彼女なら大丈夫だろうということで決まったそうです。当然、彼女が赴任した当初は夜も寝る時間がないくらい時間外受診が多く、ヘリ搬送も多かったそうです。そんな中、彼女はなぜそうなってしまっているのか原因を調べました。問題は島内の見回りシステムが機能していなかったことやハイリスク患者の未受診、コミュニティー内のつながりの問題などだったそうです。多忙を極めていた診療所勤務の中、彼女がとった行動は島の医療・福祉関係者と一堂に会して交流を深めることでした。最初はよそよそしく、状況の進展はなかったそうですが、定期的に開催しているうちに打ち解けあい、自然と見回りをしようという話になり、そして、ハイリスク患者を見つけ、早期介入し重症化を予防しようという流れになりました。そうして、見回りシステムが機能し始めたお陰でヘリ搬送数が年間20件程度まで減少したとのことでした。

これがまさに地域志向ケアのもっとも劇的な1例といえるでしょう。
私と同時期にこの先生は赴任されていたのですが、私は対して何もできませんでした。敢えて申し上げるならば、島の行事に積極的に参加し、時々、学校に健康教室をしに行った程度でした。

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