今回は持久性スポーツ大会での用意すべき医療機器と消耗品についてです。今回もuptodateからです。
○気道確保
・サイズ3~4の喉頭鏡
・ビデオ喉頭鏡
・挿管チューブ サイズ7㎜、7.5㎜、8㎜
・挿管のためのスタイレット
・ネーザルエアウェイ サイズ6㎜、7㎜
・オーラルエアウェイ サイズ6㎜、7㎜
・挿管用ガイド
・ETCO2探知機
・バッグマスク
・ラリンゲアルマスク サイズ4、5
○気道管理薬物
・ロクロニウム
・サクシニルコリン
・エトミデート
・ケタミン
○循環管理薬物
・シリンジ入りエピネフリン注射液ー最低4本
・シリンジ入り炭酸水素ナトリウムー最低2本
・アミオダロンー最低2バイアル
○輸液
・5%ブドウ糖入り生理食塩水ー1つのテントに1Lバッグを50本
・生理食塩水ー1Lバッグを50本
・3%高張食塩水250ml-3~5本
○その他の薬剤(内は最小必要数)
・エピペンまたは1mlアドレナリン注シリンジ(3)
・ネブライザーマスク(3)
・β刺激吸入液1箱
・抗コリン吸入液1箱
・抗ヒスタミン薬(5)
・制吐剤(25錠)
・50%ブドウ糖液50ml(10~12)
・ミダゾラム2㎎(1箱)
・グルカゴン
○その他の医療機器(最小必要数)
・除細動器(5)
・血糖測定器(各テントまたはエイドステーションに)
・血糖測定テープ(1パック)
・100mlシリンジ(1テントに3個)
・2.5mlシリンジ
・輸液チューブセット(5)
・22G針
・25G針
・18Gと20Gの留置針
・電解質測定器(商品名:iSTAT)(1テントに2個)
・血清測定機用チップ(10)
・直腸温計
・氷
さらに追加するなら、ちょっとした外傷に備えて、ワセリンとラップ、テープ、ガーゼ、吸水パッドでしょうか。
これからのシーズン、活発になってくるマラソンやトライアスロンをはじめとする持久性スポーツ大会の医学的な管理と準備について、uptodateというオンライン教科書をもとに勉強してみましたので、まとめを書いておきます。
○持久性スポーツ大会は参加者数や障害のリスクによって、多くの傷病者が発生する可能性があるものとして考えます。
○医療を要することになる要因には、
・イベントタイプ(より強度の高いレースはよりトラブルが多い)
・気候(異常な高温や湿度あるいは低温)
・レースの距離
・参加者の健康度合いと普段からの運動度合
・参加者の慣れ具合(気温、湿度、海抜など)
・安全に対する準備(給水方法や医学的トリアージ、コース設定など)
○イベントに関連した死亡は比較的まれだが、心臓突然死、熱中症、運動誘発性の低ナトリウム血症によって生じうる。また、トライアスロンやオープンウォータースイムでの溺水も、まれだが生じうる。心臓突然死はあらゆるタイプのレースや距離でも生じるので緊急対応手段を準備しておく必要がある。運動関連失神はしばしば生じるが、一般に良性で自然に良くなる。
○持久性スポーツの大会は「計画された災害」として医学的にアプローチすることができる。医学的準備のキーコンセプトと核となるタスクは以下を含んでいる。
・心臓突然死、熱中症、運動誘発性の低ナトリウム血症を含む致死的な危険に気づき、対応を計画する
・エイドステーションで一般的な医学的問題に対して認識し、計画する。これらの状態に対応できる人員と資源を確保する。
・地域の救急医療のリーダーや組織と調整する。
・一般的で重要な病状に対し標準的治療管理プロトコルを開発または適応させる。これらのプロトコルに対し、スタッフを育成する。
○必要な医療機器と消耗品はイベントの種類や発生しやすい病状に基づいて決定する。
○レース当日はコース全体を網羅する効果的なコミュニケーションシステムが必要です。バックアップもメインシステムが故障したときに重要です。携帯電話、携帯ラジオ、アマチュア無線の組み合わせで機密の通信が可能です。無線通信は機密が保たれない可能性があります。
○特に暑さとより長いレースでは脱水をさけるために、適切な水分の提供が重要です。最も遅いランナーの場合、10㎞マラソンでは3分の1の地点と3分の2の地点で給水するのが適切です。ほとんどのレースでは3km~5㎞ごとに給水所が設けられます。特に長距離レースではランナーに過剰な水分補給をさけるよう教育することも重要です。
○参加者の年齢や場所、イベントの性質によって、レースをキャンセルする必要がある条件が発生することもあります。極端な気温や周辺の雷、強風、空気の質の悪さはイベントを中止する理由になります。イベントのスタッフやボランティアの安全も考慮する必要があります。