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 認知症の早期発見は意味があるのか?

2024/12/17

 今回は認知症を早期診断するのは良いことなのか?についてです。

 まず、アルツハイマー病などの老年性認知症を早期診断することは不利益よりも利益が上まることは実は研究ではきちんと証明されていません。ただし、治療可能な認知症(慢性硬膜下血腫や甲状腺機能低下症、正常圧水頭症、うつ病、ビタミンB1/B12欠乏症、葉酸欠乏症、脳腫瘍、せん妄、てんかん)は早期治療した方が良いです。これらを治療する目的であれば症状のある方の早期発見に意味があると言えます。

しかし、アルツハイマー型認知症を代表する老年性の認知症はどれもこれといった治療薬はなく、アルツハイマー型認知症の薬とされる薬(ドネペジルやレカネマブなど)も認知症の短期間の進行をわずかに遅らせる程度の効果しかないことがわかっています。

認知症を何らかの医療による介入で積極的に治療するという目的ではほとんど意味がないと考えられます。

ご本人に告知したところでショックだけ大きいだけで、何か有益性があるのか私には想像がつきません。

 一方で家族を含む周りの人達にとってはいいのかもしれません。というのも、認知症と診断が下りれば、物忘れの症状も「そういうもの」として受け入れやすくなります。
何度も同じことを聞いてきたり、物をなくしたり、物を盗られたと言われたり、薬を飲まなかったり、冷蔵庫に食べられなくなったものが溢れていたり、料理の味付けがおかしくなったり、服装に無頓着になったり、怒りっぽくなったり、汚物をいじったり、全部、認知症のせいだからとある程度受け入れやすくなると思います。汚物処理自体、不快感の多い作業ですが。

でも、自分の配偶者や親はしっかりしているものという今までのイメージというのは根強いものでもあります。ですので、認知症の症状とわかっていても、なかなか割り切れないというのもあります。

なので、症状の軽いうちに心の準備をしておく。受け入れ準備をしておけると、その対処法も予習しておきやすくなります。そのために認知症の早期発見は有効かもしれませんね。

クリスマスシーズンだから、やさしい世界について考えよう

2024/12/10

 突然ですが、みなさんは経済格差が健康格差につながることはご存知ですか?
簡単に言うと、お金持ちは寿命が長く、所得の低い人は寿命が短くなる傾向があると言うことです。

これは単純にイメージがつきやすいかもしれませんね。お金持ちほど自身の健康に気を使いやすく、そのためにお金を投じることができる。一方で低所得の人は健康に投資する余裕がなく、健康への興味が低い。しかも、タバコやお酒などの依存性のある嗜好品を好む傾向にあり、ジャンクフードをより頻繁に食べる傾向があると言う統計結果があります。

個人の問題で言うと上記の通りなのですが、超富裕層のアメリカ人が平均的な日本人よりも寿命が長いかというとそうではないのです。なぜでしょうか?それは社会全体の経済格差が寿命を短くすると言うことを示しています。多くの貧困層が富裕層の足を引っ張っている形をとるからです。

病院には低所得層の方が多く受診、入院することになります。いっぱいの病院には治療を早期に受ける必要があっても、そのために早期に治療を受けることができないと言うことが生じる。そのためにお金持ちでさえ治療が遅れ寿命が短くなるとも考えられています。

では、せっかくお金持ちになったのに低所得者のせいで寿命が短くなると言い切れるでしょうか?努力しない貧乏人が悪いと言い切れるのでしょうか?これには実は複雑な問題があります経済格差。画像 2/4

「親ガチャ」と言う言葉が少し前に流行りましたが、これはおよそ真実を言い当てていると言えます。

出自の影響はとても大きいです。極端な例を挙げると虐待する両親だったとします。虐待されて育った子は自己肯定感が低く、努力しても報われないという教育を親から受けることになります。そのため、努力しても無駄、自分は能力の低い人間だと考えるようになり、精神疾患を発症しやすく、社会にもうまく適応できなくなりやすい傾向を持ちます。

その虐待する親はなぜ生まれたのでしょうか?関係するものとして社会からの孤立、貧困、教育の低さ、精神疾患の存在、アルコールを含む薬物依存などです。高学歴で裕福な家庭でも虐待は起こり得ますが上記の要因に比べたら発生頻度は低くなります。

虐待親でなくても、貧困家庭では親の自己肯定感、自己効力感が低く、どうせ自分たちの子は大した能力がないとあきらめ、全く期待せず、子供への教育投資をしない、する余裕がなくなることも考えられます。

こうして貧困の連鎖が生じ、子々孫々と貧困が受け継がれていきます。

では、どうすれば格差を少なくし、みんなで豊かになることができるでしょうか?

少なくとも必要と考えられることは全ての子供達への安全で心休まる家と十分な食事。そして、教育です。

7歳までにたくさん話しかけて、言葉の能力をみんなで高めてあげましょう。

学校教育について来られない子供達にはしっかり、周りの大人やお友達がサポートしてあげる必要があります。

学費が理由で高等教育を受けられない、大学に進学できないなどがないようにすることが重要ではないかと考えます。

両親が社会から孤立しないように、ご近所さんで声をかけ合いましょう。

貧しい親がいれば社会的なサポートを受けられるように助言など手助けしてあげましょう。

すべての人が十分な教育を受け、自己肯定感、自己効力感が高く、ほとんどの他人を信頼できる状態であれば、経済基盤がもっと成長すると考えられます。そして社会全体が豊かになるでしょう。それは優しさがもたらしたと言えると思います。

ちょっとだけ”おせっかい”なくらいが丁度いいのかもしれません。

格差をへらし、みんなで豊かになるには人に優しい社会をみんなで目指しましょう。クリスマスらしい絵。画像 2/4

参考図書
イチロー・カワチ, 『命の格差は止められるかーハーバード日本人教授の、世界が注目する授業』 小学館新書
近藤克則, 『健康格差への処方箋』医学書院

訪問診療を始める流れ

2024/12/03

 前回、訪問診療で何ができるのかについて書きましたが、実際に訪問診療をはじめるにはどのような流れになるのかご説明したいと思います。

①今、通っているクリニックや病院に通院が難しくなってきた。あるいは特に病気はないが高齢でいつ自宅で亡くなっていてもおかしくない状態になってきたので訪問診療が必要になってきた。

②当院へ訪問診療を直接、電話(078−591-8070)で依頼する。
または、ケアマネジャーやあんしんすこやかセンターに相談して訪問診療をしているクリニックを紹介してもらい、訪問診療可能かどうか問い合わせてもらう。ご入院中の場合や病院に通院中の方は地域連携室に相談して訪問診療可能なクリニックを探してもらう。そこから訪問診療可能か問い合わせてもらう。

③面談の予約をする。(ご家族の方にご来院いただくか、ご家族もご来院が難しい場合は初回の訪問診療を兼ねてご自宅で面談を行うことも可能です。)

④他院に通院中の場合は診療情報提供書を作成してもらう。(なくても訪問診療は可能ですが、ある方がよりスムーズに病状を把握することができます。)

⑤面談をする。
面談では現在の病状についてやご自宅の状況、事務的な確認と説明をします。訪問診療を開始することになった場合、契約書や同意書が必要なため、それらの書類にご署名していただきます。または持ち帰っていただいて、次回の訪問時に書類をお預かりします。

⑥初回、訪問診療当日
医師がご自宅にお伺いし訪問診療開始となります。24時間365日電話対応し、必要であれば往診*を行います。

*往診は患者さんの求めに応じて臨時で患者さんのご自宅にお伺いして診察すること。訪問診療はあらかじめ計画を立てて、訪問日を決めて診察をすることです。

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