神戸市北区北鈴蘭台駅前の内科・小児科・外科 こさか家庭医療クリニックです。

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院長ブログ

地域志向ケア

2015/02/01

家庭医療の必須項目として地域志向ケアがあります。
その医師の働く地域に対して介入し、地域全体をケアするといった概念といえるでしょうか。その地域の抱えている健康問題を調査し、その原因と解決法を探り、問題を解決することでもあります。
もっとも簡単な具体例としたら、側溝の蓋がないから危ないので、役所に申し入れて蓋をつけてもらうとかですね。
もっと高度な実話をもとにした例を挙げますと、粟国島の長嶺先生が行った例をあげようと思います。

沖縄県の離島、粟国島は人口800人程度の島ですが、年間の本島への緊急ヘリ搬送がかなり多い離島として、沖縄の離島医療を知る者の中では有名な島でした。私のいた西表島西部(人口1400名程度)で年間12件前後でしたが、粟国島はその倍以上、年間50件はあったのではないでしょうか。もともと、粟国島は本島から飛行機で行くような場所で船で移動したらかなり時間がかかる場所だったので、ヘリ搬送数は高速船で1時間以内で石垣島につく八重山諸島(与那国を除く)よりも必然的に多くはなります。そこに長嶺先生という若く、体は小さいが、やる気に満ちた優秀な女性医師が赴任することになりました。その島は女医には難しいだろうといわれていたのですが、配属を決める人たちは彼女なら大丈夫だろうということで決まったそうです。当然、彼女が赴任した当初は夜も寝る時間がないくらい時間外受診が多く、ヘリ搬送も多かったそうです。そんな中、彼女はなぜそうなってしまっているのか原因を調べました。問題は島内の見回りシステムが機能していなかったことやハイリスク患者の未受診、コミュニティー内のつながりの問題などだったそうです。多忙を極めていた診療所勤務の中、彼女がとった行動は島の医療・福祉関係者と一堂に会して交流を深めることでした。最初はよそよそしく、状況の進展はなかったそうですが、定期的に開催しているうちに打ち解けあい、自然と見回りをしようという話になり、そして、ハイリスク患者を見つけ、早期介入し重症化を予防しようという流れになりました。そうして、見回りシステムが機能し始めたお陰でヘリ搬送数が年間20件程度まで減少したとのことでした。

これがまさに地域志向ケアのもっとも劇的な1例といえるでしょう。
私と同時期にこの先生は赴任されていたのですが、私は対して何もできませんでした。敢えて申し上げるならば、島の行事に積極的に参加し、時々、学校に健康教室をしに行った程度でした。

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