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院長ブログ

西加奈子「サラバ!」読みました

2015/02/11

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今年の直木賞受賞作品ということで、早速、読んでみました。

一言でいうと「すごい」です。何がどうすごいかを伝えるのはできないのですが、なんというか、最初はさざ波のようで、だんだん大きくなり、最後にはすごい波になる感じでした。

お話の内容は作者の自伝的内容となっているようです。
主人公は歩(あゆむ)。1977年、父の転勤先のイランで生まれるところから話が始まります。問題行動を繰り返す姉、静かですごく優しい父、美しい母との家族関係。母と姉の関係。母の愛情を得るために受け身と諦めの姿勢を取り続けるようになる主人公。特に、カイロに住んでいたときに親友ヤコブとのエピソードが後々にも影響を及ぼし、このときはじめて「サラバ!」がでてくる。しかし、両親の離婚により、帰国し、ヤコブと別れ、いつの間にかその言葉も忘れてしまう。そして、成長していく過程で出会い、別れを繰り返し、揺り動き、37歳の今までを振り返る。

さまざまな出会いの中でキーマンとなってくるのが、両親と姉、夏枝おばさん、矢田のおばちゃん、須玖、鴻上、ヤコブである。

特に私が気に入ったのは「矢田のおばちゃん」で、背中に弁天の入れ墨があり、矢田アパートの大家でありながら、地域のゴッドファーザー的な役割を担っている。多くの人が、おばちゃんの家を訪れ、悩み事を話、おばちゃんはうんうんと聴いて、人々は帰っていく。そんなおばちゃんは物語の最後までいい影響を及ぼし続ける。

そして、作者が最も言いたいのはずばり「自分が信じるものを誰かに決めさせてはいけない」だろう。最終的には自己啓発的な感じになるが、主人公の周りにも、時々、自分の信じることを貫く人たちが現れるようになっていた。そのへんもうまく効いていると思える。

西加奈子作品は「円卓」しか読んだことがなかったが、円卓同様、最後はさわやかに読み終えることができました。円卓はつぼみから花がぽっと咲くような感じでしたが、こちらは大波がざざーっと来たような印象をうけました。

上下2巻ですが、どんな人でも読んでみる価値はありです。

 

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