桜も咲き始めましたね。春の訪れを感じる時期となりました。「春眠暁をおぼえず」という言葉があります。春の夜は寝心地がいいので朝が来たのを気づかずつい寝過ごしてしまうという意味です。
良い睡眠は健康にさまざまな良いことがあります。
日中の集中力が上がる。
誘惑に強くなる。
頭が冴える。
スポーツをする方なら練習の質が上がる。強い負荷にも耐えられる。
筋力トレーニングの効果が上がる。
気分が良い。
などです。逆に寝不足が質の悪い睡眠だと、当然、良い睡眠とは真逆の効果で、
日中の集中力低下。
思考力の低下。
誘惑に負けやすくなり、食べすぎたり、飲みすぎたりもしやすくなる。
スポーツをする方は練習の質が下がり、強い負荷に耐えられない。
筋力トレーニングの効果が減少。
うつ病など精神疾患になりやすくなる。
などがあります。よく試験前に徹夜して試験勉強するなんてすることがある、あったかも知れませんが、これはおすすめしないです。
よくいませんでしたか?試験前に「やばい、めっちゃ寝てしまった〜」とか言っている人の方が成績が良いってこと。
それはちゃんと寝たから成績が良いのです。ちゃんと寝られるだけ、それまでにしっかり勉強していたというのもありますが、睡眠の効果も大きいです。
実際に私は大学の頃、試験前とはいえ数時間でも寝ないと記憶が定着しなかったですし、試験もパスできませんでした。同じ頃に試験勉強をスタートした友人で徹夜した人も何名かいましたが、正直、彼らよりも徹夜しなかった私の方が成績が良かったです。
では、良い睡眠をとるにはどうすれば良いか?色々なことが書いてあったりしますが、確実に効果のある方法を以下に列挙します。
です。どれかやってませんか?どれかをやっているけど眠れているなら問題ないです。
ちなみに健康に良いとされる睡眠時間は7時間〜8時間です。
眠れないな、寝てもスッキリしないなと感じておられるなら、上記を実践してみることをおすすめします。
春がやってきましたね。新入学、新入職の方もおられると思います。入学時、入職時には健康診断があったりしますね。実は健康診断の健康への寄与効果はわかっていません。「ケンシン」は同じ音でも「健診」と「検診」では意味が変わってきます。
「健診」は健康診断の略で健康であることを確認するための検査と言ってもいいかもしれません。
「検診」は無症状の方に対して、がんや生活習慣病などの早期発見、早期治療に繋げるためのものになります。
検診についてはさまざまな研究がされていて、USPSTFというアメリカの機関がおすすめの検診項目を公表しています。おすすめの検診項目は年齢や性別によって異なります。
例えば便潜血による大腸がん検診は44歳までは推奨されませんが、45歳〜75歳まで毎年の検査を勧められています。
反対にすべきでないとされている検診もあります。
例えば、70歳以上で無症状のPSA検査(前立腺がん)。
全年齢で無症状の人の頸動脈狭窄症の検査。
全年齢で無症状の人の膵臓癌の検査。
などがあります。すべきでないというものは有益性よりも不利益つまり害が上回ることが明らかであることが判明しているからということになります。
人間ドックなどで、ご自身のお金で全額自費でそれらの検査を希望されてするのは止めませんが、無駄な検診かどうかの判断に迷う場合は”家庭医・総合診療医”か一般内科医にご相談してもらうのが良いかと思います。
これを循環器の専門医や泌尿器科の専門医などに相談されると各分野の先生はその分野の病気を予防したいのでその検査をお勧めするかもしれません。つまり、偏った判断になることもありますので中立に判断できる家庭医・総合診療医あるいは一般内科医がお勧めです。
私たち、家庭医・総合診療医の外来は子供から大人まで幅広く診療しており、年齢で言うと特徴的なのは思春期の方々を診るのが得意は言わないまでも苦手意識が少ないです。
大人でも子供でもない思春期。思春期に多い悩み、病気があります。代表的な症状だと不登校があります。その原因として多い病気は朝起きられない”起立性調節障害”というものがあります。これは体は大きくなったにも関わらず、血圧を上げる力が弱くて、朝、寝ている状態から立ちあがろうとすると血圧を上げきらず、頭痛や腹痛などが生じたりする病気です。このために学校に行けなかったり、遅刻したりするようになったりします。
また、過眠症やうつ病の症状であったり、うつとは言わないまでも人間関係がつらくて学校に行きづらいために頭痛や腹痛が生じることもあります。
学校自体は辛くないし、家族・友人関係も良好だけど、自分にも理由がわからないけど、学校に行きたくない。という場合もあります。
こう言った方々のお話をじっくりお聴きし、重度のうつ病やその他の精神疾患がありそうなら精神科へ紹介します。しかし、思春期専門の精神科の予約が取れるのが3ヶ月〜半年先だったりするので、それまでの間、我々でなんとかフォローを行なっていきます。
ほとんどの場合は時間経過とともに良くなっていきます。それは体が成長したことであったり、周りの環境が変わったり、いっそ学校をやめてしまって、通信制の学校に転校するなどがきっかけであることもあります。
また、大人の皆さんは経験あるでしょうが、思春期は夜更かしししたくなる傾向にあります。そのため、生活が不規則になりがちです。人間は10代の頃から20代くらいまで夜型になる傾向にあるとも言われています。なので、無理に早寝早起きする必要はないですが、生活リズムを整えることが改善につながることも多いです。
人間関係で悩んでいる時はコミュニケーションスキルを指導することで良くなることもあります。これは実際に診察室でロールプレイのようなことをすることもあります。
ここで一例を紹介します。
ある16歳の女性Aさんはサッカー部のマネジャーをしていました。学校に行けないというのです。信頼関係を築き、じっくり話をうかがうと、どうもサッカー部の特定の男子部員から「ブス」などと言われるということが辛いということでした。
私は「その男の子、本当はAさんのこと好きなんやと思うよ。だって、ほんとにブスと思ってて嫌いだったら、わざわざ言わんでしょ。無視してるか無関心なはずやで。」と少し励ましも込めて、推測を伝えました。
そしてさらに「ブス」などと言われることをやめてもらうための非暴力コミュニケーション(Nonviolent communication: NVC)という方法をお教えしました。NVCはとても簡単な構造で練習すれば誰でも可能です。伝え方に順序があり、
①事実
②自分の感情
③必要としていること
④具体的にしてほしいこと
の順に伝えます。この場合だとAさんは
①「ブス」と言われる。(事実)
②辛い、悲しい、傷つく(感情)
③楽しい学校生活を必要としている。または仲良くなりたい。楽しい部活。など(必要としていること)
④「ブス」と言わず、代わりに普通に挨拶や「ありがとう」と言ってほしい。または「かわいい」と言ってほしい。
これを一つの文章にすると。
「あなたにブスと言われたら、私はすごく悲しい。私は楽しく部活をしたい。だから、「ブス」とか言わないで、普通に挨拶とかありがとうと言ってほしい。」
となります。これを指導後、Aさんは早速やってくれたようで、男子生徒から心無い言葉を言われるのはなくなり、諸症状が改善されたということで、当院への通院は終了となりました。
NVCは大人でも普段から練習、使用していないとなかなか使えないですが、他人に要求を伝える非常に役立つコミュニケーションスキルなので知っておいて良いと思います。
思春期のお子さんの扱い、特に異性のお子さんの場合は親として、とても困惑することが多いです。そこに不登校や身体症状があるとさらに困りますね。そうした場合は一度、家庭医・総合診療医にご相談してみてください。