今回は認知症を早期診断するのは良いことなのか?についてです。
まず、アルツハイマー病などの老年性認知症を早期診断することは不利益よりも利益が上まることは実は研究ではきちんと証明されていません。ただし、治療可能な認知症(慢性硬膜下血腫や甲状腺機能低下症、正常圧水頭症、うつ病、ビタミンB1/B12欠乏症、葉酸欠乏症、脳腫瘍、せん妄、てんかん)は早期治療した方が良いです。これらを治療する目的であれば症状のある方の早期発見に意味があると言えます。
しかし、アルツハイマー型認知症を代表する老年性の認知症はどれもこれといった治療薬はなく、アルツハイマー型認知症の薬とされる薬(ドネペジルやレカネマブなど)も認知症の短期間の進行をわずかに遅らせる程度の効果しかないことがわかっています。
認知症を何らかの医療による介入で積極的に治療するという目的ではほとんど意味がないと考えられます。
ご本人に告知したところでショックだけ大きいだけで、何か有益性があるのか私には想像がつきません。
一方で家族を含む周りの人達にとってはいいのかもしれません。というのも、認知症と診断が下りれば、物忘れの症状も「そういうもの」として受け入れやすくなります。
何度も同じことを聞いてきたり、物をなくしたり、物を盗られたと言われたり、薬を飲まなかったり、冷蔵庫に食べられなくなったものが溢れていたり、料理の味付けがおかしくなったり、服装に無頓着になったり、怒りっぽくなったり、汚物をいじったり、全部、認知症のせいだからとある程度受け入れやすくなると思います。汚物処理自体、不快感の多い作業ですが。
でも、自分の配偶者や親はしっかりしているものという今までのイメージというのは根強いものでもあります。ですので、認知症の症状とわかっていても、なかなか割り切れないというのもあります。
なので、症状の軽いうちに心の準備をしておく。受け入れ準備をしておけると、その対処法も予習しておきやすくなります。そのために認知症の早期発見は有効かもしれませんね。