先日の「ケアとまちづくり未来会議」で印象に残った言葉の一つ「リミナル(境界、中間的なという意味)」。われわれ、家庭医の仕事はこの「リミナル」を得意としているなと感じました。
家庭医の専門性の一つに「未分化な健康問題を扱う」というものがあります。未分化な健康問題とはまだ診断がつけられないような状態、症状のことです。あるいは大人でもない子供でもない思春期もリミナルですね。または妊娠中もそうかもしれません。これから親になるけど、まだなっていない状態です。
未分化な健康問題は実は頻繁に出会います。家庭医で扱えるのは軽度の状態ですが、生活に障害が出ていて重度であれば、疑わしい専門科に紹介します。それでも診断がつかない、あるいは日常生活に支障があるというほどではないが、気になるといった状態でも家庭医で扱います。
継続的に長期間診察していくと、診断がつくこともあります。もちろん、そうでない場合もあります。こうした曖昧な状態を曖昧なまま診ていく。これができるのが家庭医の強みの一つであります。
診断がつかず、治療法もなく、不快な思いが続き、その症状が医療で解決できなかったとしても、患者さんの症状や思いを聴きながら、試行錯誤しつつ付き合っていくことができる。それが家庭医の強みの一つです