立春を迎えましたが、まだまだ寒いですね。冬は風邪の季節でもあります。皆さんは風邪をひいた時、どうしてますか?早く治したいから、早めに病院を受診するようにしている。休んでいれば治るので、休養に努める。どんなに症状が辛くても仕事を休めないから、仕事をする!それぞれ、患者さんの経験や価値観によって違いますよね。
風邪の早い段階で医療機関を受診すれば早く風邪は良くなるか?
数十年前までは風邪の早いうちに病院を受診してお薬をもらったら早く良くなるという考えの人は医者も含めて多かったように思います。私の子供の頃も風邪をひいたら、すぐに自宅の風邪薬と抗生物質を飲まされていました。今考えると、父は無駄なことをしていたなと思いますが、当時のほとんどの医者はそうしていました。
無駄な?と思われましたか?そうなんです。昔から言われている通り、風邪を治す薬を発明したらノーベル賞を取れるとまで言われていました。今でもそうです。風邪のほとんどの原因はさまざまなウィルス感染です。ウィルスに抗生物質は効果ありません。抗生物質は細菌を殺すお薬です。細菌とウィルスはサイズが全く違っており、細菌は光学顕微鏡で観察することができますが、ウィルスは電子顕微鏡でないと観察することができないくらい小さいものです。
また、風邪の原因が細菌感染であったとしても抗生物質を飲んでも飲まななくても治るまでの期間に差はないと言われています。風邪は急性上気道炎と呼ばれます。肺炎は下気道の炎症になります。上気道とは耳、副鼻腔を含む鼻、のど、気管支までのことを指します。これらが炎症が起きた時の症状として、のどの痛み、鼻水、鼻詰まり、頭痛、耳の痛み、咳、痰が出ます。面白いことに肺炎の人にはほとんど鼻水は出ないことがわかっています。
つまり、鼻水、鼻詰まりの人に抗生物質を出して効果があることはあまりないです。ただし、症状の強い急性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)や7日以上改善しない副鼻腔炎、中耳炎の方には抗生物質を使用します。
風邪の診断の人に抗生物質を出すと数百人に一人くらいの割合で副作用が見られ、抗生物質のおかげで症状が改善する人は10万人に一人程度という研究結果があります。
風邪薬で風邪は早く治るか?
抗生物質で風邪が早く治らないのは理解してもらえたかと思います。では、総合感冒薬や去痰剤や咳止め薬などに風邪を早く治す効果はあるのでしょうか?
こちらも先ほど説明した通り、早く治ることはありません。しかし、熱さまし・痛みどめ、痰のキレをよくするお薬や鼻水どめなどのお薬は大人の場合は症状をある程度和らげてくれることが期待できます。子供の場合は熱さまし・痛みどめ以外に効果的な症状を和らげてくれるお薬は今の所の研究ではないのが現状です。咳止めは大人、子供に関わらず偽の薬と比較して効果に差がないとされており、依存症や眠気などの副作用のため、実は推奨されません。
以上から風邪はいくら早めに薬を飲んだからと言って、早く治りはしないということです。早く良くするためには休むことが大切です。くれぐれも無理して仕事や学校には行かないようにしましょう。仕事の成果は上がらないし、同僚にも感染させ、より業績悪化させかねないので自宅でゆっくり休むようにすることを勧めます。