6月13,14日と日本プライマリケア・連合学会学術大会に参加してまいりました。
今年はつくばで開催され、大盛況でした。
学びとともに多くの同志との再会や新たな出会いも得られ、素敵な2日間でした。
主にわたくしが参加したシンポジウム、ワークショップのテーマは
・シンポジウム「総合診療医に求められるスポーツドクターとは」
・渡航医学のワークショップ
・General Mediacalismを考えるワールドカフェ
・支部会活動についてのワークショップ
でした。スポーツドクターのシンポジウムのシンポジストの一人に為末大さんもいらっしゃいました。内容はトップアスリートチームのスポーツドクター、チームドクターを受診するのは整形外科疾患は10%程度で他は内科疾患やメンタルの問題ということでした。また、一般ほど、筋骨格系のトラブルでの受診が多いということでした。スポーツドクターとなる総合診療医は一般の外来で筋骨格系疾患への対応に習熟するよう練習しておくのがよいということで、これからスポーツドクターにもなろうと考えている私には自信が得られたし、課題も見いだせたので、良いシンポジウムでした。
渡航医学については渡航先の流行疾患や渡航者自身がどのような行動をするのかを踏まえた介入が必要ということ。航空機による身体の変化、英文診断書の書き方など非常に実務的なないようで勉強になりました。
General Medicalismのワールドカフェはオランダ、イギリスの家庭医も招いて、日本の総合診療医の普及が主なテーマとして話し合われました。その中のショートレクチャーで、イギリスの先生が言うにはフランスなどは1000人に1.5人以上の割合で総合診療医(家庭医)がいるのに対し、日本は1000人のうち0.1もあるかどうかという統計に、まだまだ日本は総合診療医後進国だなと思わせられたことと、これから日本に総合診療医・家庭医を普及させるには我々自身の明確な目標と計画、そして必ず目標を達成させるという覚悟がもっとも必要なのではないかと気づかされました。
支部会活動については、これまで自分自身はあまり参加できていなかった支部会の活動内容について知ることができ、また、ほかの地域での取り組みをしることができました。そして、人の輪もさらに広がりました。
学会に参加しても、最新の知識を得るという目的はネットの普及により弱くなっていますが、それらをわかりやすく吸収するためのワークショップや新たな気づきを得られるようなシンポジウムが多く、かつ、人と人との交流というメインテーマも満たされる素晴らしい学術大会でした。
私の診療方針を公開していこうと思います。そういえば、家庭医療の専門的スキル・知識についての更新も怠っていましたが・・・。それはおいておいて、まずはもっとも受診理由に多いもののひとつ、かぜ(急性上気道炎)について書きます。
あくまでも、個人的解釈にもとづく治療方針なので、ほかの医師は違う診療方針でも構いません。それに医療は日進月歩ですので、明日には診療方針が変わっているかもしれませんのであしからず。
まず、かぜとは一般に鼻水・鼻づまり・くしゃみ、のどの痛み、咳、痰などが同時期に生じる病気の総称をいいます。その原因のほとんどがウィルスによるものです。多いものでライノウィルス、アデノウィルスなどです。今話題のMERSのコロナウィルスもウィルスですね(感染対策などは厚生労働省のホームページが参考になります)。
コロナウィルスも含め、多くのウィルス感染症は治療薬を持ちません。ですので、抗生物質は効果なく、かぜに対し、処方してはならないと世界的に啓蒙されています。
かぜの多くの自然経過は感染後、2,3日で発症し、咽頭痛、その後、鼻水などの鼻炎症状、それが良くなったと思ったら、次いで咳、痰が出始めます。完全に治癒するのに平均21日ともいわれています。風邪薬を飲んだからといって早く治りもしません。
前述のように治療薬はなく、症状をおさえる対症療法のみとなります。
大人であれば、様々な薬を使用できます。わたしは喉の痛みには鎮痛薬(アセトアミノフェンやロキソプロフェン、ナプロキセンなど)を用います。
鼻汁、鼻閉、くしゃみには初期にはエフェドリンを用いることが多いです。これはあまり好きではない先生もいますが、実際に効果があるという研究結果もあります。処方は3日を最高としています。なぜかというと副作用、特に依存的になってしまうことなどが生じやすくなるからです。あまり長く続く場合は眠くならないタイプの抗アレルギー薬に切り替えたりします。
咳については中枢性鎮咳剤(脳に作用して咳をしずめる)薬はアメリカ胸部学会、アメリカ家庭医療学会などでも使うべきではないとされています。ですので、咳に効果があるとされるナプロキセンを処方することが多いです。ナプロキセンは消炎鎮痛薬でかぜによるさまざまな症状を軽減したという研究結果もあります。
痰には単純に去痰剤を処方します。
熱があれば、アセトアミノフェンを処方することが多いです。
また、希望であれば、漢方薬でも対症療法が可能です。代表的なものであれば、風邪全般に香蘇散や鼻水には小青龍湯などです。
お子さんとくに小学生以下の方にはアセトアミノフェンのような解熱剤のほかに風邪に対し、お薬を処方することはほとんどありません。
なぜなら、お子さんに対する咳止めや鼻水止め、去痰剤などは偽薬と比較して差がなかったという研究結果があることと、もし、薬の副作用でなにかあった場合の損害が大きいこと、風邪は自然に治る病気であることからです。
代わりに1歳以上であれば、ハチミツとヴェポラップをお勧めすることが多いです。ハチミツは安物ではなく、純粋のハチミツ(水飴などでのばしていないもの)を用いてください。研究もいくつかされていて、偽薬よりも効果があるということです。飲ませ方は寝る前にティースプーン1~2杯を水とともに飲ませます。そうすると夜間の咳症状が改善し、お母さんもお子さんもよく眠れたということです。実際に私の妻は大人ですが、風邪の時にハチミツをなめて寝ると、咳が楽になったということでした。
また、漢方薬も希望であればお出しすることがあります。
じゃあ、医者に行く必要ないんじゃないの?と考えられるかもしれません。実はそうなんです。特にお子さんは食事も水分もとれて、意識もはっきりしていれば、ほとんどの場合、問題ありません。しかし、市販の風邪薬も飲ますべきではないといわれていますので、ご注意ください。
かぜの仲間に中耳炎や副鼻腔炎(いわゆる蓄膿)があります。実はこちらも軽症なら抗生物質を使わずに経過観察できます。
どうでしょうか?なんとなく理解していただけましたか?
研究があるということを書いていますが、科学者なら本来は参考文献を記載すべきなのですが、面倒なので省きます。医療者の方であればgoogleやPubMedなどお調べになればすぐに出てくると思いますので、お手数ですがそちらでお調べください。もし間違っていればお教えください。
写真は風を感じる?鳩間島です。