前回、訪問診療で何ができるのかについて書きましたが、実際に訪問診療をはじめるにはどのような流れになるのかご説明したいと思います。
①今、通っているクリニックや病院に通院が難しくなってきた。あるいは特に病気はないが高齢でいつ自宅で亡くなっていてもおかしくない状態になってきたので訪問診療が必要になってきた。
②当院へ訪問診療を直接、電話(078−591-8070)で依頼する。
または、ケアマネジャーやあんしんすこやかセンターに相談して訪問診療をしているクリニックを紹介してもらい、訪問診療可能かどうか問い合わせてもらう。ご入院中の場合や病院に通院中の方は地域連携室に相談して訪問診療可能なクリニックを探してもらう。そこから訪問診療可能か問い合わせてもらう。
③面談の予約をする。(ご家族の方にご来院いただくか、ご家族もご来院が難しい場合は初回の訪問診療を兼ねてご自宅で面談を行うことも可能です。)
④他院に通院中の場合は診療情報提供書を作成してもらう。(なくても訪問診療は可能ですが、ある方がよりスムーズに病状を把握することができます。)
⑤面談をする。
面談では現在の病状についてやご自宅の状況、事務的な確認と説明をします。訪問診療を開始することになった場合、契約書や同意書が必要なため、それらの書類にご署名していただきます。または持ち帰っていただいて、次回の訪問時に書類をお預かりします。
⑥初回、訪問診療当日
医師がご自宅にお伺いし訪問診療開始となります。24時間365日電話対応し、必要であれば往診*を行います。
*往診は患者さんの求めに応じて臨時で患者さんのご自宅にお伺いして診察すること。訪問診療はあらかじめ計画を立てて、訪問日を決めて診察をすることです。
通院が難しくなった患者さんのお宅に医師が訪問して診察を行う訪問診療というものがあります。この訪問診療では何ができるのでしょうか?
まず、訪問診療では一般的な診察を行います。お話を聴いて、聴診器をあてる、皮膚に床ずれはないかなどの体の診察をします。そして、必要なお薬を処方します。これが一般的な安定している患者さんの診察の流れになります。
そして、必要であれば検査を行います。
可能な検査は血液検査、尿検査、簡単な超音波検査、心電図検査、各種細菌培養検査が可能です。医療機関によっては在宅でX線検査ができるところもあります。
処置をすることもあります。例えば、
床ずれの治癒促進目的、感染の原因となりそうな血流の悪い組織を取り除くデブリドメントという処置。
切り傷、裂けた傷などの縫合。
抗菌薬の点滴での投与や脱水や栄養を補うための点滴。
麻薬の持続点滴。
人工呼吸器をつけている患者さんの気管カニューレの交換。
膀胱に留置してあるカテーテルの交換。
腹水穿刺。
膝・肩関節注射。
何らかの原因で分厚くなってしまった爪の爪切り。などです。
輸血も行っているところもありますが、当院では輸血中、ずっと観察しておいてもらえる訪問看護師がいないためできないです。
そのほかにできることは、
人工呼吸器の管理、非侵襲的陽圧換気(NIPPV)、在宅酸素などの管理、中心静脈栄養の管理、胃ろう・経鼻経管栄養管理などが可能です。
では、できないことは?
クリニックの外来や病院でできて、当院の訪問診療でできないことは以下のようなことになります。
検査
X線検査(レントゲン検査)、詳細な超音波検査、CT、MRI、シンチグラム、筋電図、脳波検査
処置
全身麻酔、腰椎麻酔、指先以外の神経麻酔を要するような手術
バンパー式胃ろうカテーテルの交換。
輸血療法。
血液透析、腹膜透析。
骨折の整復。など。
になります。さらに詳しいことをお知りになりたい方は直接クリニックまでお問い合わせください。
通院が困難になってきた方のために医師が自宅までお伺いして診察する訪問診療という方法があります。加齢や脳卒中、神経難病などの病気によって足腰が不自由になった方やがんなどのために体力が著しく低下して通院が困難になった方を対象としています。
この訪問診療を開始する時というのは改めて、今後の「暮らし方」についてもう一度、ご家族の方々や介護者の方々と話し合うとても良いタイミングと言えます。
『人生会議』(Advance Care Planning)とも言います。これは患者さんの人生に対する価値観や希望も含め、今後の生活を話し合い、ご本人に対する理解を周りの人たちが深めていくというものです。
はっきりと申し上げるとこれから死ぬまでの間にどのように暮らして、何を優先的に守るのか、何を避けたいのかを介護される方や医療者が理解を深めるということです。その中には心臓マッサージや人工呼吸などの蘇生処置を望むのか?食べられなくなった時に管を通して栄養を入れるのか入れたくないのか?なども含まれます。
ご本人の価値観、思いはいつもそばにいるご家族であっても、全てを知っているわけではありません。ですので、きちんと言葉で伝え、お互いに食い違いがないか確認しておくことが必要です。
また、急に状態が悪化することがあるということも理解しておいてもらう必要があります。その時に慌てふためいて患者さんの意向を無視した判断をしないために周りの人たちが「〇〇さんならこう言うだろうな。こう決断するだろうな。」と考えられるように準備しておくということが大切ですね。