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内科

生活習慣病

①脂質異常症-コレステロール・中性脂肪が高いと言われた

●脂質異常症とは?

一般にコレステロール・中性脂肪が高い状態をかつては高脂血症と呼ばれていましたが現在は脂質異常症と呼ばれます。
厚生労働省の調べでは日本人成人のだいたい5人に1人がかかっていると言われています。

脂質異常症があると心筋梗塞などの冠動脈疾患の危険性が高くなり、LDLコレステロール値を下げることでその危険性を減らすことができます。

診断は日本動脈硬化学会では空腹時(10時間~12時間の絶食後)の採血でLDLコレステロール値が140mg/dL以上またはHDLコレステロール値が40mg/dL以下または中性脂肪が150mg/dL以上とされています。
診断基準値はスクリーニング目的のものであり、薬物療法開始の基準ではないとされています。

一方、生活習慣病先進国アメリカのガイドラインでは個人のリスク(冠動脈疾患・糖尿病・高血圧・喫煙の有無、性別、年齢、人種)とLDLコレステロール値と総コレステロール値から評価して、薬物療法の適応を判断します。

●どのような人が検査した方がよいか?

日本のガイドラインでは明確な基準はありませんが、その人のリスクを判断するNIPPON DATA80では40歳~74歳の男女を対象としています。

アメリカのガイドラインでも40歳~74歳の男女となっていますので、基本的には40歳を迎えたら検査をするのが良いでしょう。

その他に若い糖尿病を持っている方や50歳以下で突然死した2親等以内のご家族をもつ方、家族性高コレステロール血症の疑いのある方などが対象となります。

●予防・治療方法は?

基本的には予防も治療も生活習慣の改善になります。
日本のガイドラインでは

  • 禁煙し、受動喫煙を回避する
  • 過食を抑え、標準体重を維持する
  • 肉の脂身、乳製品、卵黄の摂取を抑え、魚類、大豆製品の摂取を増やす
  • 野菜、果物、未精製穀類、海藻の摂取を増やす
  • 食塩を多く含む食品の摂取を控える(食塩6g/日未満)
  • アルコールの過剰摂取を控える(アルコール25g/日以下)
  • 有酸素運動を毎日30分以上行う

となっています。
最近では摂取する動物性脂肪は問題ないが、炭水化物の摂取を控える方が重要であるという説もあります。

炭水化物は体内に吸収されて、エネルギーなどに使われますが、使われなかった残りはコレステロールとして体内に蓄えられ、こちらの方が血糖値や血中コレステロール値に与える影響が大きいとする考え方です。

まずは適正な食事量と1日5分からで良いので運動を習慣づけ、禁煙するように心がけましょう

●薬物療法について

脂質異常症の薬物療法には主にスタチンと呼ばれる種類のお薬を用います。
このお薬が最もLDLコレステロール値を下げることができ、冠動脈疾患を予防できるとされています。

その他にコレステロールや中性脂肪を下げると言われている薬はありますが、最も重要な冠動脈疾患の予防効果が明確に示されているお薬は今のところありません。

また、75歳を超えた患者さんに投与した場合の研究も乏しく、冠動脈疾患やリスクが高くない限りスタチンは不要という考え方が主流です。

●お薬は一生のみ続けないといけないの?

一度お薬を飲み始めると一生お薬を飲まないといけないのではないかと考えておられる方にお会いすることがあります。
生活習慣の改善がなく、LDLコレステロールの値がうまくいかなければ飲み続けなければならないでしょう。

しかし、冠動脈疾患や糖尿病、脳梗塞になったことがなく、リスクが軽度から中等度の方で生活習慣が改善し、LDLコレステロール値が長期間良好ならば中止も検討してよいと考えています。

もし、お薬を中止したいとお考えであれば医師に相談することをお勧めします。
脂質異常症は治る病気です

②高血圧症-血圧が高いみたい

●高血圧症とは

18歳以上で収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上か拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上ある場合、あるいは60歳以上で上の血圧が150mmHg以上、下の血圧が90mmHg以上ある場合に診断されます。
診断には自宅での血圧測定が重要で、診療所や病院だと緊張して血圧があがってしまう方がおられるからです。

また、血圧計は手首で測定するものよりも、二の腕で測る機械の方が精確です。

高血圧を放置すると、心筋梗塞・心不全や脳卒中をはじめ、目が見えにくくなったり、腎臓病になる危険性が高くなります。

●予防・治療は?

予防も治療も基本は生活習慣の改善です。
日本のガイドラインJSH2014では、

  • 禁煙し、受動喫煙をさける
  • 食塩摂取を控える(日本のガイドラインでは6g/日以下)
  • 野菜、果物を積極的に食べる
  • コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控え、魚油を積極的に食べる
  • 理想体重を維持する{理想体重(kg)=身長(m)×身長(m)×20~25}
  • 心臓病のない人は定期的に毎日30分以上の有酸素運動をする
  • アルコール摂取を控える(エタノール 男性20~30ml/日以下、女性10~20ml/日以下)

と推奨されています。
この塩分摂取量は海外と比較して多めの設定とも言われています。
かなり薄味に感じるかもしれませんが、しっかりとだしを利用することや、香辛料を用いることでおいしさを保つことができるそうなので、一度、料理本などみて研究されると良いでしょう。

また、血圧は上記の他に精神的ストレスの状態も影響します。
十分な睡眠がとれており、気分が安定していることも重要だと考えます。

●薬物療法

お薬の選択肢にはサイアザイド系利尿薬、カルシウム拮抗薬、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬、β遮断薬があります。
それぞれに特徴があり、患者さんにあったものを選択していくことになります。

●お薬は飲み続けないといけないの?

よく、一度お薬を飲み始めると一生薬を飲まないといけないと考えている方にお会いします。
生活習慣が改善していなければ、そういうことになるでしょう。

しかし、生活習慣を改善されて、血圧も長期間良好で、心疾患や腎臓病がなければお薬をやめることも検討して良いです。

もし、何年間も血圧が落ち着いているのであれば医師に相談してみることをお勧めします。
高血圧症は治る病気です

③2型糖尿病-血糖が高いと言われた

●2型糖尿病とは?

まず、糖尿病には1型と2型があります。
1型は生活習慣に関係なく、自分でインスリンを出せなくなり、血糖値が慢性的に高くなる病気でインスリン注射が必要です。

2型糖尿病は生活習慣が原因でインスリンを出しているのに不十分で慢性的に血糖値が高い状態を言います。

アメリカ糖尿病学会の診断基準は

  • 空腹時(8時間以上絶食後)血糖126mg/dL以上
  • 75gOGTT(75gのブドウ糖を飲む検査)で2時間値が200mg/dL以上
  • HbA1c 6.5%以上
  • 典型的な糖尿病の症状(のどの渇き、多飲多尿、体重減少)か高血糖症状があり随時血糖200mg/dL以上

のいずれかに該当すれば糖尿病と診断されます。

●どんな人が検査した方がいいの?

  • 全年齢でアジア人ならBMI23以上(BMI=体重kg/(身長m×身長m))で、その他に糖尿病リスクのある方。その他の糖尿病リスクとは以下
    • 身体活動が低い
    • 一親等以内に糖尿病の家族がいる
    • ハイリスク人種・民族(黒人、ラテン系、ネイティブアメリカン、アジア人、太平洋諸島の住民)
    • 4000g以上の赤ちゃんを出産した女性または妊娠糖尿病と診断された女性
    • 高血圧症がある
    • HDLコレステロール<35mg/dLまたは/かつ中性脂肪>250mg/dL
    • 多嚢胞性卵胞症候群の女性
    • A1c≧5.7%、境界型糖尿病
    • その他にインスリン抵抗性が疑われる状態(高度肥満など)
    • 心筋梗塞など冠動脈疾患にかかったことがある
  • 45歳以上のすべての方。特に過体重や肥満の方
  • 検査で問題なければ3年間隔で再検査することが望ましい

糖尿病を放置すると、心筋梗塞、脳卒中、失明、腎不全で透析、足壊疽(足がくさる)、感染症、勃起不全の危険性が高くなります。

治療は血糖を正常に保つだけでなく、血圧、コレステロールも適正に保って、ようやく上記の病気の予防効果があります。

2型糖尿病はこのように血圧、脂質も注意して治療しないといけないので生活習慣病の王様ともいえます。

●予防・治療は?

予防も治療も基本的には生活習慣の改善です。

  • 禁煙する
  • 適正な体重を保つ。BMI 20~25
  • 魚を最低週2回食べる。魚油やオリーブ油を積極的に食べる
  • アルコール摂取を控える
  • 塩分摂取を控える
  • 週150分以上の有酸素運動をする
  • 禁忌でなければ糖尿病のある人は筋力トレーニングを最低週2回行う
  • 日中90分以上座るような長時間の安静をさけるようにする

以上のようなことが推奨されています。

●薬物療法

糖尿病と診断された場合、薬物療法を開始します。

冠動脈疾患の予防、死亡率減少効果に有効であると示されている薬はメトホルミンと呼ばれる種類のお薬とインスリン注射のみです。
その他のお薬は血糖を下げる効果は示されていますが、最も肝心な冠動脈疾患や死亡率を有意に減少させるかは明らかでないのが現状です。

メトホルミンは古典的な薬であり、安価であることもメリットです。
以上から薬物療法の基本はメトホルミンを使用することになります。

このお薬は高齢者や心臓、腎臓が悪い方に使用する場合は十分な注意が必要です。
メトホルミンと生活習慣改善でうまく血糖をコントロールできなければ、その他のお薬を追加するか、インスリン注射を併用することになります。

私のおすすめはメトホルミンだけでうまくいかない場合は早期にインスリン注射を使用したほうが、血糖コントロールはうまくいくと考えています。

●医者は何をみているか?

医者は糖尿病を改善し、合併症を予防するために以下の指標を用います

  • HbA1c≦7%か?低血糖の症状はないか?
  • 血圧≦140mmHg/90mmHgか?
  • スタチンは飲んでいるか?
  • 禁煙しているか?
  • 微量アルブミン尿、たんぱく尿はでていないか?
  • 体重は適正か?
  • 足の神経障害、水虫、傷はないか?
  • 眼科には年1回受診しているか?
  • 予防接種はきちんとしているか(肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチン)?
  • 男性なら勃起不全はないか?

●一生お薬を飲み続けないといけないの?

生活習慣と血糖値が改善され、長期間維持されれば血糖を下げるお薬をやめることも検討します。
また、インスリン注射も同様に状態が良ければ、中止や内服薬に変更することも可能です。
2型糖尿病は治る病気です

 

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